VAIO 505 に関するメモ

黒崎 浩行
<hkuro@kokugakuin.ac.jp>
Last updated on: Oct 26, 1999.

目次


はじめに

ソニーのB5サイズノートマシン、VAIO PCG-505 は 1997年11月に登場しました。 私は1997年12月初旬に某パソコンショップの店頭でこれを見て、 そのスタイリッシュな外観に惹かれ、思わず衝動買いしてしまいました。

自宅では1992年ごろから、文書入力やメールの読み書きなどにノートマシンを使い、 スキャナ、プリンタなどの周辺機器を使った処理や、zip, jaz などの リムーバブルメディアへの読み書きにデスクトップ機を使うという使い分けを 続けています。(両者をネットワークでつなぐようになったのは、 Windows 95 が発売された1995年からで、それまではフロッピーディスクや InterLink (PC-DOS についてきたリモートドライブ機能) でデータの受け渡しを していました。) デスクトップ機のほうは部分的な増強と細胞分裂をつねに繰り返していますが、 ノートマシンはそうそう簡単に買い替えるわけにいかないので、 VAIO 505 を買うのは一大決心でした。 しかも、それまで使っていたノートマシン、アキア Tornado 510VG は、 FreeBSD をインストールし、ほぼ満足して使っていたので、 これはひょっとしたら大きな無駄遣いになるかも、という不安もありました。

実際、Tornado 510VG は今でも十分現役で使える名機で、 VAIO 505 と比較しても、液晶ディスプレイは 800x600 の TFT でハードディスクも 同じ 1GB ですし、むしろポインティングデバイスにトラックポイントを 採用していることなど、優れた面もあります。

しかし、VAIO 505 は、その薄さ・軽さ・デザインが理屈抜きで妙に所有欲を かきたてました。それに、かつて短波ラジオやウォークマンで親しんできた ソニーが、パソコン市場でついに本命のマシンを投入してきたという、 個人的な思い入れもありました。 まさに、「こいつを俺が買わないでどうする」という気にさせられたのです。

当初は Tornado と同様に FreeBSD をインストールするつもりでいましたが、 プログラマブルパワーキーや PictureGear など、Windows 95 環境でしか得られない 機能やアプリケーションを捨てるのはもったいないと感じ、プリインストール された Windows 95 のままで使いつづけることにしました。 そのかわり、Win32 版の Mule と ASCII pTeX をインストールし、 メールの読み書きには Mew on Win32 を使っています。

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ハードディスクの換装

注: 言うまでもないことですが、 ユーザーが自分でマシンを分解・改造すると、 メーカーの保証が受けられなくなります。 ここに記した内容について私は一切の責任を負わないものとします。

VAIO 505 はハードディスクの容量が 1GB しかなく、Mule for Win32 や TeX を入れ、それまで書き溜めたファイルを入れると、それでもう満杯になって しまいました。それでプリインストールされたアプリケーションを削除して なんとかやりくりしてきました。

今年の2月に後継機の PCG-505X と PCG-505EX が発売されましたが、それらは 2.1GB のハードディスクを載せていました。さらに、初代 505 のハードディスクを 2.1GB に換装するサービスを行うことをソニーが発表しました。

ノートマシンのハードディスク換装経験は何度かあるものの、 かつて CPU 換装に失敗した経験をもつ私としては、 ソニーの保証つきでハードディスクを換装してもらえるというサービスに、 思わずなびきそうになりました。しかし VAIO 505 をかたときも手放せない状態に あるのも事実なため、このさい自力で換装することにしました。

換装のときに悩んだのは、マシンを分解してハードディスクを取り替える作業 よりも、元のハードディスクにあるファイル群をどうやって 新しいハードディスクに移すか、ということでした。ちなみに、ソニーのサービスでは データの移行は行ってくれないそうです。DOS の頃なら適当なバックアップツールを 使ってフロッピーディスクにバックアップしておき、それを新しいハードディスク上に リストアすれば済んだのですが、Windows 95 となると、そのために用意する フロッピーディスクの枚数も、コピーのための手間や時間もハンパじゃないですし、 新しいハードディスクに Windows 95 をセットアップした後で、古いハードディスクの ファイルをリストアしても、完全に同じ状態にはならないという不安もあります。

たまたま、『UNIX Magazine』1998年5月号の「ワークステーションのおと」に、 ノートマシンの 2.5インチハードディスクを交換するときの、 ファイル移行の方法が記されていました。 なかでも、Windows 95 (OSR2) がインストールされているデスクトップ機の セカンダリIDEインターフェイスに 新しい2.5インチハードディスクを接続して、 パーティションの確保とフォーマットを行い、 ネットワーク経由でノートマシンのハードディスクの 内容を新しいハードディスクにコピーするというやり方はなかなか周到で、 これを参考にして作業を行うことにしました。新しいハードディスクは、 東芝 MK2105MAT です。 マシンの分解方法については、 石井英男・恣岡悄・鈴木昌幸・力石真人『VAIO note 505 Hyper Operation』 (ソフトバンク、1998年) を参考にしました。

ここではその内容について記しません。それぞれの記事・書籍をお読みください。 ネットワーク経由でのファイルのコピーには2時間半、 マシンの分解と再組み立てには15分ぐらいかかりました。 ただ、デスクトップ機でパーティション設定した新しいハードディスクは、 その領域がアクティブになっていなかったため、VAIO 505 に取り付けて 最初に起動したときには「Operating system not found」というメッセージで 止まってしまいました。フロッピーディスクから起動して、fdisk /mbr を実行し、 fdisk で領域をアクティブにすると、起動できるようになりました。

さらに、Windows 起動時にフリーズするというトラブルが起きました。 Safe モードで起動して、 レジストリの修復を尋ねるダイアログボックスに「はい」を選択し、 再起動すると、後は無事に起動するようになりました。

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64MBメモリ増設

VAIO 505 を購入してからちょうど1年が経ちました。 後継機や他社のバイオモドキなどには目もくれず、といきたかったのですが、 実は9月に、大正大学で教えているコンピュータ表現の授業教材研究・作成のために、 IBM ThinkPad 235 を購入しました。ですが、VAIO 505 が依然として メインマシンであることには変わりありません。 OS は Windows 95 のままで、ハードディスクにもまだ若干の余裕があります。 できればこのままあと1年は使い倒したいところです。

そこで今回は、メモリを増設することにしました。 ハギワラシスコムの HWD-VA64 という 64MB の EDO メモリで、T-ZONEミナミでは 24,800円で売られています。メモリモジュールはかなり脆い作りになっているので、 ソニーはユーザー自身による増設を保証外としているのですが、 ゆっくりと軽く押さえ続けていけば、わりとすんなりとできました。

ちなみに、メモリを増設すると Save To Disk (ハイバーネーション) 領域の 再作成が必要になります。 ハードディスクの空き領域が少ないとこれができない、ということを配慮してか、 T-ZONEミナミの店頭では、「ハイバーネーションができなくなります」と、 値札の但し書きでも、口頭でも注意されました。ですが私の場合、 4月に増設した 2GB のハードディスクのうち、1.8GB を Windows に割り当て、 200MB の空き領域を残して、ここにハイバーネーション領域用のパーティションを 作っていたので、これを作り直すことで対処できました。これを行うには、 バックアップCD-ROMの ETC ディレクトリにある phdisk コマンドを使います。

バックアップCD-ROMから起動し、BIOSの再初期化やバックアップの実行を中断して、 コマンドプロンプト (A:\>) に移ります。そして、\ETC ディレクトリに行って、

phdisk /delete /partition

を実行し、前に作った35MBの Save To Disk 領域をいったん削除し、 システムをリブートします。

もう一度バックアップCD-ROMから起動してコマンドプロンプトに移り、 今度は次のコマンドによって、現在搭載メモリ分の Save To Disk 領域を作ります。

phdisk /create /partition

これでリブートしたら作業完了です。103MB ぐらいの領域を確保したもようです。

試しに Save To Disk とレジュームを行ってみましたが、 レジュームはほぼ30秒程度で完了しました。

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4GB HDD換装、166MHzクロックアップ、Windows 98 アップグレード (トラブルあり)

休暇中に VAIO も Windows 98 にアップグレードしておこうと思いたち、 今年度中の仕事が一段落したのを期に、ハードディスクの大容量化、 クロックアップ、Windows 98 へのアップグレードを一気に行ってみました。

4GB HDD換装

まず、ハードディスクを 4.3GB のもの (東芝 MK-4309MAT) に換装しました。 これは前回と同じ要領です。少し詳しく書いておきます。

必要なもの:

手順:

  1. デスクトップ機と VAIO をLAN接続する。

  2. 2.5インチ・3.5インチ変換コネクタを用いて、新しいHDDを デスクトップ機のセカンダリ・マスターIDEインターフェースに接続する。 これが D: ドライブになる。

  3. デスクトップ機で Windows を起動し、fdisk でパーティションを作成する。 今回もハイバーネーション用の領域 (約 120MB) を残すために、 基本領域を 3.8GB にしておきました。

  4. 再起動後、フォーマットする。/S オプションはつけない。

  5. VAIO の C: ドライブ (ルート) を共有する設定にし、デスクトップ機で ネットワークドライブとして割り当てる。ここでは X: とする。

  6. デスクトップ機の MS-DOS プロンプトで次のコマンドを実行する。

          xcopy32 X:\ D:\ /E /C /Q /H /R /K
          

    2時間半ぐらいかかりました。

  7. スワップファイル win386.swp をつくるために、次のコマンドを実行する。

          echo a > d:\windows\win386.swp
          
  8. デスクトップ機の Windows を終了し、HDD を取り外す。

  9. VAIO を分解し (手順は [石井ほか1998] を参照)、HDD を交換する。 このとき後述するクロックアップ作業も同時に行いました。

  10. 用意しておいたフロッピーから VAIO を起動する。 fdisk で領域をアクティブにし、sys c: でシステムファイルを転送する。 なぜかこれをやらないと、ハードディスクからすぐには起動できませんでした。

  11. ハードディスクから起動時に F8 キーを押して Command Prompt Only モードで起動し、次のコマンドを実行してハイバーネーション領域を 作成する。

          phdisk /create /partition
          
  12. 再起動する。

実はこの段階で大きなつまづきに遭遇しました。これはクロックアップのせいかも しれないので、次節に記します。

166MHz クロックアップ

クロックアップの手順は [石井ほか1998] を参考にしました。 はじめは 200MHz にするつもりでしたが、基盤を見て、私の半田ごての腕では 手に負えないと思い、いちばん無難な 166MHz にとどめました。

HDD換装・クロックアップ後、ハードディスクから Windows を起動すると、 Windows ロゴ表示 → 画面左上端のアンダーバー文字表示 → 画面暗転、 の後にフリーズしてしまいました。Ctrl + Alt + Del もききません。

電源スイッチを 4 秒ほど引いて電源を切った後再起動し、Starting Windows 95 ... のメッセージが出ているときに F8 キーを押して、Safe モードで起動します。 このとき、次のようなメッセージボックスが現れます。

SBS.DRV cannot load because VSBS.386 is not available. Check your SYSTEM.INI Windows configuration file.

これはスマートバッテリのコントロールチップと通信するドライバ VSBS.386 が ノーマルモードでしか動かないためで、気にする必要はなさそうです。

Windows を再起動すると、今度はノーマルモードで起動できましたが、 640x480画面になり、次のようなメッセージが出てきました。

ディスプレイ設定に問題があります。アダプタの種類が正しくないか、 または現在の設定はこのハードウェアでは動作しません。

そして、[画面のプロパティ] ダイアログボックスが出てきます。そのまま [OK] ボタンを押すと再起動の確認を求められるので、[はい (Y)] を押します。

これでいちおう通常の状態になりました。しかし、何度か再起動していると、 また起動時にフリーズする現象が2回に1回ぐらいの割合で起こります。

これはクロックアップのせいなのかどうかわかりません。熱もそれほど出ていない ようですし……。

Windows 98 へのアップグレード

VAIO 505 (初代) の Windows 98 へのアップグレード手順は、 ソニーから提供されているものを参考にして行いました。

そして、アップグレードを行ったら、どういうわけか起動時のフリーズが 起こらなくなりました。といっても、まだ数回しか再起動していないので、 また起こるかもしれません。

効果

スピードに関しては、クロックアップの効果と Windows 98 アップグレードの (マイナス?) 効果はあまり感じません。 もともとエディタ (Mule for Win32) の使用がメインですし……。

ハードディスクを4GBにできたことは大変なメリットです。これで、 電子辞書を駆使しながら執筆する環境が作れそうです。

(1999年4月1日追加) それから、前述のように私は Mule for Win32 の愛用者ですが、 Windows 98 にアップグレードした後は、mule.exe をdumpしなおさなければ なりません。これをしないとデスクトップのアイコンの名前が化けたり、 テキストボックスでキー入力ができなくなったりといった不具合が起こります。 方法は c:\mule2\bin に移って dumpw95.bat を実行するだけです。

以前 Windows 98 マシンに Meadow 1.00 をインストールしてみたときにもこれで はまりました。VAIO のほうでは、まだ Meadow に移行できずにいます。自作の Emacs Lisp プログラムが動かなくなるなどの問題があるので……。

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Safe モードで起動できない

Mule for Win32 を Windows 98 で使用していると、 他のアプリケーションで文字入力ができなくなったり、 メニューの文字列が化けるなどの不具合が出てきます。 これを回避するには、Safe モードで mule.exe を dump しなおせばよいそうですが、 クロックアップ、Windows 98 アップグレード後の私の VAIO は Safe モードで起動できなくなっていることに、最近になって気づきました。 キーボードの種類の判定の後、HDD のアクセスランプが2度ほど点滅して、 あとは無反応になります。

前に、 4GB HDD 換装・クロックアップの後にフリーズが起こった けれども、Windows 98 へのアップグレードにより解決したと書きました。 この現象が再発したとも考えられます。

SONY VAIO 505 Simple Link からさまざまなページをたどってみると、初代505で HDD (MK4309MAT) が突然止まるという記述があるページを見つけました (松井孝雄さん 「VAIO 505」)。 これと関係があるのかもしれません。

解決方法をご存知の方がいらっしゃいましたら、ご教示を……。

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参考文献

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Hiroyuki KUROSAKI <hkuro@kokugakuin.ac.jp>