「レッド・ドラゴン」の反時代性

(2003-03-11)

さいきん更新をさぼっているので、ちょっと前に見た映画「レッド・ドラゴン」の感想を。

映画を見てから原作本(ハヤカワ文庫)も読んだのだけれど、そちらに収められていた桐野夏生の解説に共感。1990年代は、異人やマイノリティに人々が関心・共感を寄せた時代だった、「レッド・ドラゴン」は、そうした関心が精神分析に洗練され(「羊たちの沈黙」)、やがて飽きて自分への興味にとじこもる(「ハンニバル」)よりも以前の状況を映し出している、というような趣旨のもの。この時代のうつりかわり観は、9・11以前と以後のアメリカについての朝日新聞の坂本龍一のインタビュー(2003年2月23日)とも呼応する部分がある。

犯人に共鳴する捜索者ウィル・グレアムの姿は、痛々しいと同時に共感を覚えてしまう。しかし、これは心理療法などの強迫的なまでのブームが一段落してしまった後だから余計にそう思えるのであって、当時も同じように肯定的に受け止めることができたかどうかはわからない。

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