映画『精神』(想田和弘監督)
(2009-07-25)
想田和弘監督の「観察映画」第2弾、『精神』を観に行った。
この映画が撮影された2005年は、小泉政権のもとで「障害者自立支援法」が成立したころで、映画でもこの法律に対する現場の戸惑いや不満が映し出されている。間近に迫った衆議院選挙で政権交代を狙う民主党は、この法律で定められた認定区分のあり方や定率一割負担の見直しを求めており、今は実にタイムリーな公開時期だと思う。
私たちは多かれ少なかれ生きづらさを抱えて日々を送っていると思うのだが、針が振り切れて具体的な損失が現れてしまうとき、私たちはその人にどう対応していったらいいのか。医療体制はもちろんあるわけだが(その運営の大変さも)、偏見というベールに覆われてもいる。「観察映画」という手法(音楽・テロップがいっさいなく、撮影者・カメラがとらえたものをひたすら観客に提示する)がそのベールをはぎとり、一人の対話者として向き合う勇気のようなものを与えてくれたような気がする。
細かい感想としては、最後のシーン(患者の方が、公営住宅への入居希望について役所に電話をかけて遅くまでクレームをつけ、スクーターに乗って走り去る)にはガツンときた。『精神病とモザイク』(想田和弘著、中央法規)には、試写会でのこのシーンをめぐるジャーナリストの下村健一氏との議論が載っていて、ああやっぱりと思ったのだが、おそらく観る人によってかなり印象や評価が変わると思う。
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