カート・ヴォネガット・ジュニア『スローターハウス5』

(2007-05-01)

カート・ヴォネガット・ジュニア『スローターハウス5』伊藤典夫訳、早川書房、1978年。

先月、アメリカのSF作家、カート・ヴォネガット・ジュニアが亡くなった。やはり、名前は知っていても作品をじっくりと読んだ経験がなかったので、本書を注文。奥付を見ると2007年4月30日22刷とあるので、訃報を受けて版元に問い合わせ・注文が殺到した結果増刷されたものだろう。私もその一人ということになる。

ヴォネガットは第二次世界大戦中にドイツ軍の捕虜となり、ドレスデンの収容施設で連合国軍による大爆撃を体験した。どうしたらその体験を書くことができるのか、という問いに対する答えが本書ということになる。「こんなに短い、ごたごたした、調子っぱずれの本」(30頁)。でもそこがすばらしい。

初めて読んだのに、全編に満ちた残酷な笑いのセンスには既視感というかなじみがある感じがわいてくる。自分の好きな映画監督(テリー・ギリアム、コーエン兄弟あたり)の作品に通じるものがあるからだろうか。

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